近年、若い世代を中心に「騒音性難聴」が増加しています。大音量で音楽を聴く習慣や、騒音にさらされる環境が増えたことが原因とされています。この記事では、騒音性難聴について詳しく解説し、ご自身の聴覚に目を向けていただくきっかけになれば幸いです。

世界の騒音性難聴者数

世界保健機関(WHO)によると、10億人を超える若者が、安全でない聴取習慣により、永久的で回避可能な難聴のリスクにさらされています*1。これは、スマートフォンや携帯音楽プレーヤーでの大音量の音楽鑑賞や、コンサートやクラブでの過度な騒音曝露が原因とされています。中高所得国の若者(12歳から35歳)の約50%が安全域を越えたレベルの音量で携帯音楽プレーヤーを使用し、世界で11億人が騒音性難聴の危険にさらされているとの報告もあります。

日本の騒音性難聴者数と推移

騒音性難聴は工事現場など騒音が大きい環境で起こるだけでなく、世界的に問題視され始めている大音量での音楽鑑賞にもリスクがあるとして、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が2023年度より「ヘッドホン・イヤホン難聴対策WG」を立ち上げ、精力的に活動を行っています。

あなたの身に何が起こっているのか

耳の構造と音の伝達の仕組み

  1. 外耳:耳介と外耳道からなり、音を集めて鼓膜に伝えます。
  2. 中耳:鼓膜と耳小骨(ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨)から構成され、鼓膜の振動を増幅して内耳に伝えます。
  3. 内耳蝸牛(かぎゅう)と呼ばれる螺旋状の器官があり、音の振動を電気信号に変換します。蝸牛内には外有毛細胞内有毛細胞が存在し、それぞれ音の増幅と信号伝達に重要な役割を果たします。

騒音が引き起こす具体的な変化

  • 有毛細胞の損傷:内耳の蝸牛内にある有毛細胞が、大きな音により損傷します。一度損傷した有毛細胞は再生しないため、永久的な聴力低下につながります。有毛細胞は、音を感知したり、増幅したりする役割があるので、障害を受けると、音の情報をうまく脳に送ることができなくなります。
  • 聴神経への影響:過度な騒音は聴神経にもダメージを与え、音の信号伝達が不正確になります。
  • 聴覚疲労:短時間の大きな音でも、聴覚が一時的に麻痺し、聞こえにくくなることがありますが、これが繰り返されると慢性的な難聴に発展します。

騒音性難聴の原因

  • 大音量の音楽鑑賞:イヤホンやヘッドホンでの長時間かつ大音量の音楽鑑賞。
  • 職業性曝露:工場、建設現場、空港など、騒音レベルの高い環境での労働。
  • 娯楽施設での曝露:コンサート、クラブ、映画館などでの大音量の音。
  • 一過性の大きな音:爆発音、銃声、花火などの突発的な大音量。

補聴器でどのような効果を期待できるか

騒音性難聴は、損傷した有毛細胞を元に戻すことはできませんが、補聴器の装用により以下の効果が期待できます。

  • 音の増幅:聞こえにくくなった音域を補い、会話や環境音を聞き取りやすくします。
  • 言葉の明瞭化:特定の周波数帯域の音量を調整でき、言葉の聞き取りを改善します。
  • 生活の質の向上:コミュニケーションが円滑になり、ストレスの軽減や社会参加の促進につながります。

予防

音楽鑑賞時の音量と時間の管理

  • 安全な音量:音楽プレーヤーの音量は最大の60%以下に設定することが推奨されています*2
  • 聴取時間の制限:連続して60分以上の使用を避け、適度な休憩を取る*3
  • 環境音への注意:騒音レベルの高い場所では耳栓やノイズキャンセリング機能を活用。

定期的な聴力チェック

  • 専門医の受診:定期的に耳鼻咽喉科で聴力検査を受ける。
  • 早期発見・早期対策:聞こえにくさを感じたら、すぐに専門家に相談。

教育と意識向上

  • 正しい情報の入手:騒音性難聴のリスクを理解する。
  • 周囲への啓発:家族や友人にも注意喚起を行う。

まとめ

騒音性難聴は、現代社会で誰もが陥るリスクがあります。一度発症すると元に戻すことが難しいため、日頃からの予防が最も重要です。日常の習慣を見直し、適切な対策を講じるようにしましょう。特に若年層での増加は深刻な問題であり、自身の聴覚を大切にする意識が求められます。聞こえにくさを感じたら、早めに専門家に相談し、適切なケアを受けましょう。


参考文献

  1. 世界保健機関(WHO). Deafness and hearing loss. https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/deafness-and-hearing-loss
  2. 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 「難聴」のリスクを生む、危険な音量とは https://www.jibika.or.jp/owned/hwel/news/004/
  3. 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 イヤホン難聴予防のため「あいのて」を意識しよう https://www.earphones-nancho.org/yobou